東北・新潟の酒を学ぶインタビュー

日本酒を造る技術の向上やネット通販の普及で、どこでも美味しい酒が手に入る時代。ならばその酒をもっと美味しく味わいたい!日本酒のブランド戦略としてペアリングの研究をしている醸造技術の専門家に、ペアリングの基本と東北・新潟のお勧めの組み合わせをお伺いしてきました。

仙台国税局 課税第二部鑑定官室 主任鑑定官 阿久津 武広

酒のある食空間をより豊かに

 皆さんは日本酒を購入する際、純米吟醸であるとか精米歩合が30%であるなど日本酒のスペックで選ぶことが多いかと思います。今はどこの酒蔵も技術が向上し、蔵ごとの差別化が難しくなってきました。そこで、単に日本酒を呑むだけでなく、酒と料理の相性の良い組み合わせを見つけ出し、酒のある食空間をより豊かに楽しんでいただこうというのがペアリングです。口のなかに食事が残っているところにお酒を呑んだ時に起こる変化を楽しんでみてください。

 ペアリングの基本は、以下の4つがあります。①同調効果は、相性の良い似た者同士を合わせます。同じ味や香り、温度で合わせていきます。②ウォッシュ効果は、魚や肉特有のにおいや脂っこさを緩和し、料理の後味や嫌味を洗い流す合わせ方です。③相乗効果は、同じ2種類以上の味が相互に味を強め合う現象を利用します。④対比効果は、逆に異なる味を混合した時に、お互いの味が引き立てられたり、弱められたりします。

東北・新潟の食にこんなペアリングはいかが?

 日本酒はワインやビールに比べ酸が少なく、アミノ酸(旨味)が多いのが特徴です。トラディショナルなペアリングとして、青森県の「ほたて貝焼きみそ」、岩手県の「塩うに」、宮城県の「ホヤ酢」には、素材の旨味との相乗効果を発揮するため、お酒に含まれる旨味が多く、かつその旨味を洗い流し、次の一口にいざなうような酸も多めの、山廃系などのお酒がお勧めです。

 私は秋田県の「いぶりがっこクリームチーズ」は日本で一番美味しいつまみではないかと思っているのですが、クリームチーズと日本酒の旨味の相乗効果と、燻製の香りも日本酒の香りと似ており、特にやや熟成した酒と合わせるのが最高です。フルーツ王国である山形県では「さくらんぼ、ラ・フランス、もも」などが、吟醸酒の特徴とされるフルーティーな香りと相性抜群なので、やや辛口の吟醸酒と一緒に。福島県会津地方の特産品である「馬刺し」には、アミノ酸の旨味もありながら、辛味噌を引き立てるやや甘口の酒がお勧めです。

 意外かもしれませんが、新潟県の「笹団子」はいかがでしょうか。口の中に残るあんこを洗い流しつつ、穏やかな酸味を感じる酒がよく合います。生酒のナッツの香りは、笹の香りとの相性が良いので、辛口の生酒の純米吟醸酒はいかがでしょうか。

ペアリングが醸し出す新しい日本酒体験を

 日本酒にあわせる、と言えば和食というイメージですが、実はそれ以外の食事にもよく合います。チーズにあわせる、といえばワインといわれますが、酸の多いワインはチーズの後味を洗い流してしまうので、アミノ酸の多い日本酒のほうがチーズの旨味を引き立てるということも科学的に明らかになっています。ペアリングはまず経験から。いろいろなペアリングを試して、日本酒と食の相性をより美味しく楽しんでみませんか?