東北の歴史と文化を感じる郷土料理
四季の移ろいや伝統がもたらす多彩な食文化を持つ東北。雪国で育まれた個性豊かな鍋料理など、地元の食材をふんだんに盛り込んだ郷土料理から、東北の歴史や文化を感じてください。
北国・東北で愛される 温かい鍋と汁物
きりたんぽ鍋
秋田を代表する郷土料理「きりたんぽ鍋」。きりたんぽとは、つぶしたご飯を杉の棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を食べやすく切ったものです。日本三大地鶏の比内地鶏をじっくり煮込んで取った出汁は旨味がたっぷり。地鶏、白ネギ、セリなどと一緒にいただきます。味のしみ込んだきりたんぽはもちもちとした食感となり絶品です。
せんべい汁
青森県八戸市周辺の郷土料理「せんべい汁」。鶏肉やサバなどの魚、野菜、キノコなどでとった出汁に、汁物専用に開発された南部せんべいを割り入れて煮込みます。南部せんべいは煮込んでも溶けにくくなっており、そのもちもちとした食感は、まるでアルデンテのパスタのようでやみつきになります。
芋煮
山形市などで食べられる芋煮は醤油ベースで味付けし、牛肉を入れます。毎年9月に山形市で開催される「日本一の芋煮会フェスティバル」では、6mの大鍋に3万食分の芋煮がつくられ、大勢の来場者にふるまわれます。山形市内の料理店などでも芋煮を食すことができます。宮城県や山形県庄内地方では味噌ベースで豚肉を入れるなど、地域によって特色があります。
こづゆ
福島県会津地方の郷土料理「こづゆ」。冠婚葬祭など特別な日には欠かせない料理で、具の種類は、縁起の良い7つや9つなど「割り切れない」奇数にするのが習わしです。干貝柱の出汁がきいた奥深い味わいで、朱色の美しい会津塗の器に盛られれば、彩りもあざやか。目でも楽しめる料理です。会津地方をはじめとした福島県内の郷土料理店で食べることができます。
しょっつる鍋
秋田県の名物料理の一つ「しょっつる鍋」。「しょっつる」とは、秋田県男鹿半島で多く水揚げされるハタハタに塩や麹を入れて発酵させた魚醤のこと。このしょっつるを味付けに使い、ハタハタをメインにして豆腐や長ねぎなどの野菜と煮込みます。しょっつるを加えることで旨味が増し、具材が引き立つため、シンプルながらも奥深い味わいです。
いちご煮
青森県八戸市や周辺の三陸海岸で食べられる潮汁「いちご煮」。ウニとアワビを使った贅沢なお吸い物で、晴れの日やお正月にかかせない郷土料理です。赤みが強いウニが野いちごの果実のように見えることから、この名がついたと言われています。磯の香りがぎゅっと詰まった至極の一杯をぜひご賞味ください。
魚介とお米の美味しさを炊き込んだ 絶品ご飯
はらこ飯
宮城県の郷土料理「はらこ飯」。鮭の煮汁でごはんを炊き、鮭の切り身といくらをどんぶりいっぱいにのせる鮭の親子丼です。
鮭の煮汁で炊いたご飯に、鮭の切り身といくらを合わせて食べれば、美味しさが口いっぱいに広がります。江戸時代には伊達政宗公にも献上したといわれ、阿武隈川を遡上した上質な鮭が手に入る宮城ならではの一品です。
わっぱ飯
杉の板を丸めて作った「わっぱ」という器を用いた新潟の郷土料理です。鰹や昆布でとった薄口の出汁でご飯を炊き上げ、鮭やイクラ、カニなど新潟で水揚げされる旬の魚介などをわっぱにのせて蒸し上げます。炊き込みご飯に比べてあっさりした味わいながら、魚介やお米のおいしさが凝縮されています。
古くからの歴史を持つ東北の伝統料理
一関のもち食文化
良質なもち米が収穫される岩手県一関市周辺は、江戸時代から「もち食文化」が息づくまち。伊達藩の武家社会の儀礼から生まれた「もち本膳」をはじめ、もち料理の種類は300種類以上とも言われています。あんこやずんだなどの甘いものだけでなく海老やしいたけなどを使ったお惣菜風、洋食と合わせた創作もちなどバラエティ豊かです。
精進料理
山形県の出羽三山(羽黒山・月山・湯殿山)に伝わる精進料理。出羽三山山麓で採れる旬の山菜や筍といった山の恵みを、独特のしきたりに基づいた技法で丁寧に調理します。出羽三山を参拝に訪れた人が宿泊する羽黒山周辺などの宿坊でいただくことができます。滋味あふれる精進料理で身を浄め、出羽三山へと足を運んでみてはいかがでしょうか。
庶民の味として誕生した「ご当地グルメ」
牛タン
仙台グルメの代表格「牛タン」。厚さなどタンの切り方から味付けの仕方、焼き方まで、牛タン焼きには各店それぞれにこだわりがあり、個性はさまざまです。仙台駅構内にある「牛たん通り」のほか、市内には数多くの店があるので、ぜひ食べ比べてみてください。牛タン焼き以外にも、タンシチューやたたき、刺身、すしなど食べ方も豊富。本場の味をご堪能ください。
十和田バラ焼き
青森県十和田市のソウルフード。鉄板のうえでジュージューと焼ける牛バラ肉と大量のたまねぎ。たまねぎが茶色に色づくまでしっかりと火を通し、地元のりんごやにんにくを使用した甘辛い醤油ベースのタレを水分が飛ぶまで焼きます。単品で頼むのはもちろん、白いご飯と一緒に食べるのもおすすめです。