東北・新潟発、感動を呼ぶ冬の絶景

日本は、四季折々に美しい自然の景色が見られる国です。特に冬、東北・新潟の各地域では、雄大な自然が純白の雪のベールをまとって一層幻想的な雰囲気を醸し出します。また降り積もる雪だけでなく、厳しい寒さや特別な自然条件によって育まれる雪氷の芸術もまた、冬の景色を特別なものにしてくれます。


東北・新潟には、そうした冬ならではの絶景を楽しむアクティビティが数多く存在します。冬の絶景は、春になり雪や氷が溶けると見ることができなくなってしまいます。この時期・この場所でしか出合えないからこそ美しさは一層際立ち、他の季節では味わうことができない感動を呼び起してくれるのです。

冬限定の絶景!「七滝氷瀑」を滝壺直下から見上げる

岩手県と秋田県にまたがる八幡平(はちまんたい)は、標高1,613mの八幡平山頂を中心に、複数の山々が連なって形成される広大な高原台地です。春は雪解けの様子が神秘的な“八幡平ドラゴンアイ”、夏は高山植物、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々に美しい風景を見ることができる観光名所です。


なかでも冬季は、寒さが厳しいからこそ育まれる絶景を見ることができます。そのひとつが、滝から流れる水が外気に触れて凍り付く「氷瀑」です。八幡平では、岩手山から流れる沢にある落差25mの大滝「七滝」の氷瀑を鑑賞することができます。


滝口から水が落下する過程で凍り付く滝は、水の流れそのままの形を留めます。滝壺に向かって扇状に広がった氷柱は淡いブルーに輝いて、とても神秘的な雰囲気。その景色を見れば、ダイナミックでありながらも時が止まっているかのような、不思議な感覚を味わうことができるでしょう。


この「七滝氷瀑」を快適に見学できるのが、『八幡平マウンテンホテル』が主催するスノーシュートレッキングツアーです。スノーシューとは、靴やスノーブーツに装着して歩く時に雪に沈み込みにくくする道具のこと。このスノーシューを履いて冬の森を散策し、氷瀑を見に行くアクティビティで、雪道がはじめての方も楽しく参加することができます。

ツアーでは、まずホテルに隣接する『パノラマスキー場』の4人乗り高速リフトに乗ってゲレンデ上部まで楽々アクセス。その後、雪の積もったブナの森をスノーシューで約1時間散策して氷瀑をめざします。夏は通れない、この季節ならではのコースです。


このエリアを熟知したガイドが案内する散策では、雪の上に残るウサギやリスなど動物たちの足跡が見られたり、春を待つ冬芽に出合えたりと、グリーンシーズンにはない発見がいっぱい!楽しみながら歩いて目的地の氷瀑に到着したら、ぜひ滝壺まで近づいて圧巻の美しさを堪能しましょう。ツアーで使用するスノーシューや靴、ポールなどはレンタルすることができるので、装備がない方も安心です。

「七滝氷瀑」は例年1月中旬頃から凍り始め、1月下旬から2月中旬頃に最盛期を迎えます。その年の気候条件によって滝が全面氷結したり、凍った部分と水が流れる部分を両方見られたりと、毎年異なる景色を見ることができるのも魅力のひとつです。


氷瀑鑑賞で心がホットになった後は、八幡平に湧く温泉に浸かってからだを温めるのがおすすめです。「七滝氷瀑」の近隣には『八幡平温泉郷』や『松川温泉』などの日帰り温泉施設や温泉宿などがあります。あたたかい温泉に浸かりながら、八幡平を純白に染め上げる絶景雪見風呂を楽しむことができるでしょう。

近隣のスキー場で、よりアクティブに遊ぶこともできます。スノーシュートレッキングツアーの発着点である『八幡平マウンテンホテル』に直結の『パノラマスキー場』は、緩斜面ロングコースが人気のビギナーにもおすすめのスキー場です。また『パノラマスキー場』から無料シャトルバスに乗って約10分の場所にある『下倉スキー場』では、極上パウダースノーと変化に富んだ多彩なコース、4つのツリーランエリアが楽しめます。

世界でもきわめて稀な「樹氷」を快適に鑑賞

(画像提供:蔵王ロープウェイ)

日本の一部と、世界でもわずかな地域だけでしか見られない自然現象、樹氷(じゅひょう)。針葉樹の木や枝葉が雪や氷で覆われ凍って固くなったもので、標高や地形、風向き、植生、積雪量など非常に特殊な条件が揃わなければ発現しません。樹木が雪と氷に覆われた姿は大変美しく、“自然の芸術品”といわれています。


日本で樹氷が見られる地域のなかでも、山形県と宮城県にまたがる蔵王連峰は日本最大級の規模を誇る、最も有名な発現スポットとして知られています。蔵王連峰の山頂域から中腹域にかけて、着氷と着雪が起こりやすいオオシラビソ(通称アオモリトドマツ)の群生林があり、冬になるとその群生林が樹氷と化すのです。雪原を埋め尽くす樹氷が見渡す限り広がる景色はまさに圧巻!樹氷のかたちは1つとして同じものがなく、樹木を覆い尽くすほどに成長した樹氷は、その独特の形状から“スノーモンスター”とも呼ばれています。

(画像提供:蔵王ロープウェイ)

蔵王の樹氷は山形県・宮城県どちら側からも見ることができます。宮城県側からは雪上車に乗って樹氷を見に行きますが、山形県側では『山形蔵王温泉スキー場』の中に樹氷原があります。そのため、ふもとの蔵王温泉街にある「蔵王山麓駅」から「蔵王ロープウェイ山麓線・山頂線」を乗り継いで、最短約18分で樹氷原へ直行することが可能です。もちろん、スキーやスノーボードをしない方でも乗車できます。


ロープウェイ終点の「地蔵山頂駅」に降り立つと、そこは一面の銀世界、そして次々と現れる巨大なスノーモンスター!その圧倒的な景観が、空の青と雪の白のコントラストと相まって筆舌に尽くしがたい美しさをたたえます。

さらに樹氷鑑賞は自然光の中だけにとどまりません。例年12月から2月にかけて、夜間の樹氷ライトアップが開催されるのです。漆黒の闇の中に、色彩豊かなカクテル光線で浮かび上がる樹氷は一層幻想的な様相を醸し出します。

また同じく夜間、樹氷原を雪上車「ナイトクルーザー号」で走る樹氷鑑賞ツアーも開催されます。暖房付きの新型雪上車で、ライトアップされた樹氷原を快適にクルージングする体験は、まさに唯一無二のものとなるでしょう!

蔵王の樹氷の見頃は例年12月下旬から3月上旬で、最盛期は1月下旬から2月下旬頃となっています。

なお樹氷が見られる『山形蔵王温泉スキー場』とその周辺は、東北最大級のマウンテンリゾートエリアとしても知られています。スキー場は14ゲレンデ、12コース、最大滑走距離約10kmを誇ります。樹氷を見ながら滑走できる、世界でも類のない「樹氷原コース」も整備されているので、スキーヤー・スノーボーダーはぜひ樹氷原の滑走を楽しみましょう!


またゲレンデに直結する蔵王温泉は、旅館やホテル、飲食店、土産物店などが立ち並ぶ賑やかな温泉街です。

温泉街の中には3つの共同浴場、3つの足湯、5つの日帰り温泉施設(冬季営業は3つ)があり、東北随一の強酸性線を気軽に楽しめるのが特徴。飲食店では、山形名物のそばや玉こんにゃく、また蔵王温泉名物のジンギスカンなど、多彩な山形グルメを堪能することができます。

樹氷鑑賞を旅の目的としながらも、スキーやスノーボード、温泉、グルメとさまざまな楽しみに出合えるのが山形蔵王の魅力です。

大自然の造形美とモダンアートが邂逅する『清津峡』

(マ・ヤンソン / MADアーキテクツ  「Tunnel of Light」 (大地の芸術祭作品)photo by Nakamura Osamu)

青い光を放つトンネルを抜けてたどり着いたのは、ぽっかり半円状に空いた穴。その先には、雪に覆われた切り立つ岸壁とエメラルドグリーンの清流で形成された大峡谷が現れます。トンネルの床にたたえた水鏡とミラー状の壁には大峡谷が反転して映り込み、天と地に幻想的な光景を生み出します。さらに水鏡に靴を浸して奥へと進めば、水墨画のような峡谷美が目前に迫るだけでなく、あなたもこの感動的な景色の一部となって、アーティスティックな被写体としてカメラに収まることができます!


この唯一無二の空間を擁しているのは、新潟県十日町市の『清津峡』です。清津川を挟んで切り立つ巨大な岸壁がそそり立つV字型の大峡谷で、高さ100~300mにもなる岩肌は見事な柱状をなしています。雄大な柱状節理の地形とダイナミックな清津川が織りなす圧倒的な景観から、国の名勝・天然記念物に指定、さらに富山県の黒部峡谷、三重県の大杉谷とともに日本三大峡谷のひとつに数えられています。

(画像提供:(一社)十日町市観光協会)

『清津峡』は「清津峡渓谷トンネル」と呼ばれる歩道トンネルから鑑賞することができますが、その空間全体が非日常的なアート空間となっています。十日町市は、隣接する津南町とともに、3年に1度開催される世界最大級の野外アート展『大地の芸術祭 越後妻有(えちごつまり)アートトリエンナーレ』の開催地です。「清津峡渓谷トンネル」も、2018年にアート作品『Tunnel of Light』としてリニューアルされたのです。

(マ・ヤンソン / MADアーキテクツ  「Tunnel of Light」 (大地の芸術祭作品)photo by Nakamura Osamu)

作品を手がけたのは、中国の建築家集団「マ・ヤンソン / MADアーキテクツ」。全長750mのトンネルを外界から遮断された潜水艦に見立て、外を望む望遠鏡として途中の見晴らし所と終点のパノラマステーションで作品を展開しています。冒頭の水鏡のある空間は、終点のパノラマステーションの景観です。第2見晴らし所ではモノトーンのストライプが清津峡と一体化してダイナミックな動きを作り出し、第3見晴らし所は赤いバックライトで照らされた凸面鏡に清津峡が映り込み、ミステリアスかつあたたかな空間づくりがなされています。

『清津峡』を見に十日町市を訪れたなら、『大地の芸術祭』の他の常設作品も合わせて鑑賞するアートトリップを楽しみましょう。十日町市と津南町では約200作品の常設展示に加え、季節ごとに企画展やパフォーマンス、ワークショップやイベントなどが開かれています。

(マ・ヤンソン / MADアーキテクツ  「Tunnel of Light」 (大地の芸術祭作品)photo by Nakamura Osamu)

(マ・ヤンソン / MADアーキテクツ  「Tunnel of Light」 (大地の芸術祭作品)photo by Nakamura Osamu)

まずは、作品巡りの中継地点となる主要施設を訪れるのがおすすめです。十日町市の中心部にある『越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)』では、国内外の作家による常設作品約15点を通年公開しています。建物の建築設計は、京都駅ビルなどを手がけた「原広司+アトリエ・ファイ建築研究所」が担当。中央の池と吹き抜けを回廊が囲む空間が特徴です。

(レアンドロ・エルリッヒ 「Palimpsest: 空の池」 photo by Kioku Keizo)

また棚田(山間の傾斜地を利用した田)や瀬替田(川の流れを変えて作る田)が数多く存在する十日町市松代地域には、オランダの建築家グループ・MVRDVが設計した拠点施設『まつだい「農舞台」』があります。館内では世界的なアーティスト、イリヤ&エミリア・カバコフの作品を中心に、複数の作家のアート作品を鑑賞することができます。地元の旬の食材が詰まった料理やスイーツなどを提供するレストラン「越後まつだい里山食堂」も併設されています。

(東弘一郎 「廻転する不在」 photo by Kioku Keizo)

なお2024年7月13日から11月10日の全87日間、『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024』の開催が決定しています。里山の自然とモダンアートが共鳴する絶景が、新たに誕生します。

現地の雪の状況は公式サイトなどで確認を

今回紹介した3スポットは、いずれも雪の多い厳寒地にあります。その年の雪の状況や当日の天候によって目当てのスポットまで足を運べなかったり、逆に暖冬による影響で降雪や氷結がわずかとなったりする可能性もあります。冬の自然現象を加味した観光スポットであることを踏まえ、来訪の際は事前に公式サイトなどで状況を確認することをおすすめします。

紹介したスポットをマップで見る

  • 冬限定の絶景!「七滝氷瀑」を滝壺直下から見上げる
  • 世界でもきわめて稀な「樹氷」を快適に鑑賞
  • 大自然の造形美とモダンアートが邂逅する『清津峡』

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