フォトジェニックな街並み、銀山温泉の楽しみ方を徹底解説!

大正文化の面影を残すフォトジェニックな街並み、効能豊かな温泉、風光明媚な自然など、見どころが盛りだくさんの山形県・銀山温泉。その楽しみ方を徹底的にご紹介します。

1. ノスタルジックな非日常の世界にエスケープ

山間の豊かな自然の中に佇み、都会の喧騒を離れてゆったりとした時間を過ごすことができる東北・山形県の銀山温泉。川沿いには大正から昭和初期に建てられた木造旅館が軒を連ね、古き良き時代のノスタルジックな街並みを楽しめることで人気の温泉地です。


江戸時代に銀山として栄えたのち、400年以上にわたって多くの湯治客を癒してきた歴史ある温泉街は、国民的ドラマ「おしん」の撮影地としても有名。一歩足を踏み入れれば銀山川のせせらぎが耳に心地よく、通り沿いの足湯から湯けむりが立ち上る、温泉地ならではの光景が広がります。大正時代の趣を残す美しい街並みを歩けば、当時にタイムスリップしたような非日常感を味わえるのが魅力。

四季折々、昼夜でもガラリと表情を変える銀山温泉は、街全体のどこを切り取っても写真映えする撮影スポット。夕方になるとガス灯の温かな光が街を包み込み、都心では味わえない風情を醸します。春夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、ダイナミックな自然美を背景にした街並みは、どの季節もフォトジェニック。特に人気が高いのは冬。山景をバックに雪が深々と降り積もる景色は、時間が止まったかのように幻想的。白銀の世界にライトアップが映える夜は一段とロマンティックで、一生の記憶に残る景色になるはずです。

銀山温泉を代表する景観として、訪れる人々を魅了し続ける老舗旅館が「能登屋旅館」。大正10年(1921年)に完成した木造3階建ての建物は、国の有形文化財にも登録されている威風堂々とした佇まい。正面には創業者の名前が描かれた鏝絵(こて絵)と呼ばれるレリーフが飾られ、存在感たっぷりに宿泊客を迎えます。

創業当時そのままの姿をとどめる階段、歴史を刻む調度品などが大切に残されている館内。川沿いの客室はゆったりと過ごせる和室で、繊細な木彫りの装飾が空間に温かみを添えています。

旅館から高台へと続く階段を上ると展望露天風呂、地下には貸切風呂として利用できる洞窟風呂など、温泉も充実。1階には宿泊客がお茶を楽しめるカフェがあり、木のぬくもりを感じる空間で景色を眺めながらひと息つけるなど、至れり尽くせり。温かなおもてなしに心身がほぐれたら、浴衣と下駄で街を散策するのも欠かせない楽しみのひとつです。



大正文化の面影を残す外観は、宮崎駿監督の大ヒットアニメ映画「千と千尋の神隠し」の舞台となった湯屋を彷彿させる撮影スポットとしても大人気。おすすめの撮影タイミングは、街に光が灯り始める夕暮れ時。建物正面につながるアイコニックな赤い橋を入れて撮影すれば、映画の世界観さながらの一枚に。



能登屋旅館

山形県尾花沢市大字銀山新畑446

https://www.notoyaryokan.com/

2. 銀山温泉の泉質・効能を専門家が解説

「能登屋旅館」の露天風呂



銀山温泉に滞在するなら、お湯の特徴も知っておきたいポイント。銀山温泉の泉質、そして温泉に入ることで得られる健康増進効果について、風呂・温泉と健康の関係を医学的に研究している早坂信哉さん(東京都市大学人間科学部教授・学部長/医学博士)にお話を聞きました。


日本人には馴染みの深い温泉ですが、そもそも温泉に浸かることでどんなメリットがあるのでしょうか。


「温かいお湯に浸かることの最大のメリットは、体温が上がり、血流がよくなること。細胞に必要な酸素や栄養分を運び、老廃物を回収する役割がある血液の流れがよくなることで、まずは疲れが取れてスッキリします。また体が温まることによって神経の過敏性が抑えられ、腰や膝などの体の痛みがやわらぎ、筋肉の緊張がほぐれる効果も。そのほか浮力によるリラックス効果、睡眠の質を上げる効果など、入浴にはさまざまなメリットがありますが、これらの効果がさらに高まるのが温泉です」

「瀧見舘」の展望露天風呂



「温泉にはさまざまな成分が入っているため、体を温める温熱効果が強くなります。また自宅での入浴との最大の違いは、「転地効果」があること。温泉自体の効能に加え、周辺の美しい自然や風情のある街並みなど、環境が変わることで心身にさらによい影響を及ぼす効果が期待できます。環境省が11,830人の男女を対象に実施した調査「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」(調査時期:2018年〜2021年)によれば、温泉地を訪れた人の98%以上が「癒された」「リフレッシュできた」と回答。日帰りや1泊2日の短期滞在であっても、温泉地滞在後は心身に良好な変化が見られることが明らかになっています」

「能登屋旅館」の展望露天風呂




「銀山温泉の泉質を具体的に見ていくと、最大の特徴は、温まりが強いお湯であること。塩類が皮膚の表面に膜を作って水分の蒸発を妨げ、気化熱で体が冷えるのを予防してくれます。そのため湯上がりはポカポカ、体がよく温まります。また、いわゆる温泉の匂いのもとである硫化水素はそこまで多くなく、ほのかに香る程度。この硫化水素が強くなりすぎると肌を荒らしてしまうこともあるので、銀山温泉は肌に優しいお湯と言えるでしょう。さらに遊離成分として、保湿成分であるメタケイ酸が多く含まれるため、湯上がりの肌はしっとり。カルシウムイオンも入っているため、肌はさらっと、夏でも比較的ベタベタしません。つまり、しっかり体を温めてくれるうえ、湯ざわりがよく、美肌効果も期待できるお湯と言えます」


銀山温泉のある山形県をはじめ、東北地方には個性豊かな温泉地が多く存在し、目的に応じて選べるのも魅力のひとつ。


「東北地方はもともと、体を休めるために温泉に長期滞在する湯治文化が盛んだっただけあって、湯治場として栄えた温泉地が多いと言えるでしょう。そうした療養目的で選ぶなら、秋田県の玉川温泉や、青森県の酸ヶ湯温泉。また福島県の高湯温泉、山形県の肘折温泉も湯治場らしい雰囲気があります。多彩な泉質や湯めぐりを楽しむなら、宮城県の鳴子温泉郷、秋田県の乳頭温泉郷などもおすすめです」

銀山温泉で四季折々のパノラマを望む展望露天風呂を楽しむなら、温泉街から坂を上った高台に佇む旅館「瀧見舘」へ。眼下に「白銀の滝」を望む絶好のロケーションは、開放感たっぷり。露天風呂に浸かりながら、自然との一体感を味わうことができます。宿泊客以外の日帰り入浴も可能なので、絶景とともに温泉を楽しむ至福のひとときを。そば処も営業するお宿だけあって、尾花沢産の蕎麦粉を使った上品な味わいの手打ちそばは絶品。「そば処 瀧見亭」ではランチにそばを堪能できるので、お風呂とセットで楽しむのもおすすめです。


「瀧見舘」

山形県尾花沢市銀山新畑522

https://www.takimikan.jp/

3. 体験するべきおすすめの宿をピックアップ

日本を代表する建築家のひとり、隈研吾氏の設計によるスタイリッシュな外観が目を引く「藤屋」。大正時代に建てられた建物を2006年にリノベーションして生まれ変わった外観は、モダンな佇まいながらも、街並みに溶け込む木造建築の繊細な表情を併せ持っています。

館内には“すむしこ”と呼ばれる細い竹のスクリーンや、淡い緑のステンドグラスが印象的に配され、時間や空間を“重ね合わせる”というデザインコンセプトを体感できる空間に。すべて銀山川に面している客室からは温泉街の街並みを堪能でき、食事は“非日常”をテーマにした見た目にも美しい和懐石。5つの温泉はすべて貸切で利用できるので、プライベートな空間でラグジュアリーなステイを楽しみたい人にぴったりのお宿です。


「藤屋」

山形県尾花沢市銀山新畑443

https://www.fujiya-ginzan.com/



温泉地の滞在では、食事も大きな楽しみのひとつ。銀山温泉の多くの旅館では地元の食材をふんだんに使った会席料理を提供しています。伝統的な日本のコース料理である会席料理では、前菜、椀物、焼き物などからデザートまで、一品ずつ供されるのが基本的なスタイル。

寒暖差のある気候が上質な脂を育む地元のブランド牛・尾花沢牛、旬の魚や山菜、また尾花沢市名物のそばなど、旅館ごとに趣向を凝らした季節の味に舌鼓を。

4. 温泉と一緒に楽しみたい山形の地酒

温泉地に行ったら、その土地が誇る地酒をじっくり味わいたいもの。豊かな雪解け水と上質な米、酒造りに適した風土に恵まれた山形県は、数多くの銘酒を生んでいる酒どころ。銀山温泉に店舗を構え、山形の地酒を豊富に揃える酒店「八木橋商店」にその魅力と楽しみ方を聞きました。


山形の地酒の特徴は、「高水準で、どの年代の人にもおいしいと思ってもらえるバランスのよさがあること。食事に合うものから単品で楽しめるものまで、味のバリエーションが豊富です」と八木橋さん。東北の県としては国外への輸出量が多く、「出羽桜」などは海外でも知名度が高いのだそう。


日本酒の味わいを最大限に活かすには、酒器選びも重要なポイント。「濃厚な味わいの日本酒なら陶器のおちょこ、軽やかでスッキリした辛口ならグラスでいただくのがベストです」。また料理とのペアリングについては、「伝統的な味わいの日本酒には豆や豆腐などのたんぱく質がよく合います。ワインのようにフルーティな味わいのモダンな日本酒は、チーズや白身魚、味の強すぎないオイル系のおつまみとの相性がいいですね」

店内には立ち飲み用のカウンターが設置され、気になった銘柄の試し飲みも可能(500円〜)。店頭で試してほしいおすすめの銘柄は、「山川光男」や「楯野川」。アルコール度数も低めで発泡性の「Hitotoki」なら日本酒が初めてでもトライしやすく、ミニボトルはお土産にもぴったりです。窓の外に流れる川を眺めながら、珠玉の日本酒を味わう。旅先ならではの特別なひとときを過ごせます。


八木橋商店

山形県尾花沢市銀山新畑448

http://yagihashi-jizake.jp/

極上の日本酒を一杯傾けながら、ゆったりとお湯に浸かる。そんな贅沢を叶えてくれるのが、旅館「銀山荘」の半露天寝湯付き客室。開放感あふれる窓から雄大な自然を眺めながら、誰に気兼ねすることもなく、プライベートな半露天風呂で手足を伸ばしてリラックス。夜はライトアップされた風景も楽しめるうえ、客室から注文できる日本酒の種類も豊富。六歌仙、出羽桜、小屋酒造をはじめ、山形の地酒をとことん味わい尽くすことができます。


銀山荘

山形県尾花沢市大字銀山新畑85

https://www.ginzanso.jp/



どの季節に訪れても、違う表情を見せてくれる銀山温泉。雪深い冬以外ならば、温泉街から延びている散策コースを徒歩で巡るのもおすすめです。落差22メートルの迫力ある「白銀の滝」を起点に、春夏は森林浴、秋は見事な紅葉を愛でながら、豊かな自然の中でリフレッシュを。


また温泉街の旅館は15室以下の小規模な宿がほとんど。川を挟んだメインの通りは一般車両が入れないため、夜はほぼ宿泊者のみとなり、人里離れた秘湯感があるのも嬉しいポイント。日帰りで訪れることも可能ながら、その魅力を最大限に満喫するならば宿泊での滞在がベスト。せわしない日常を離れ、ゆったりした時間の流れに身を委ねる。そして温泉地の人々の心安らぐおもてなしに触れれば、心身ともに癒される最高の旅になるはずです。

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