麻や木綿しかなかった昔、布に糸を刺すことによって少しでも丈夫に、そして暖かくという生活の知恵と、家族への愛情が作り出した手仕事。それが刺し子です。その昔、米沢には花ぞうきんという刺し子の“ぞうきん”がありました。こすられ、水で絞られ、ぼろぼろになる運命のぞうきんに、蜂の巣(亀甲)のような形の枠をとり、様々な文様を刺しこんでいったものです。これは上杉鷹山公が米沢藩主となる以前、郊外に田畑を開墾しながら住んでいた半農半士、南原地区の原方武士の妻たちの手で作られた原方さしこが始まりです。現在の豊かな時代の中で、刺し子をしなくても衣類は充分暖かく丈夫です。生きる事への執着と家族への愛情、女の手仕事として育ってきた刺し子も、今では身近な生活用品や衣服の中で美しい文様として生きています。