宮沢賢治の故郷、花巻市。そして豊富な湯量を誇る花巻温泉郷。花巻温泉内にあるバラ園は、宮沢賢治が設計した南斜花壇があった場所に1958年着工し、1960年に開園しました。広さ約5,000坪の敷地に約450種6,000株をこえるバラが四季折々の豊かな色彩と香りで庭園を満たします。6月中旬から10月下旬までの長期間にわたりバラの花を鑑賞でき、冬期でもクリスマスローズの展示販売などが楽しめる、全国的にめずらしい庭園です。バラの最盛期にはバラまつりが催され、5月下旬~10月下旬にはライトアップが煌めくナイトローズガーデンも開催します。
花巻温泉バラ園と宮沢賢治にはとても深い関係があります。1927年、花巻温泉はもともと開拓した新開地であったため、緑化が急がれていました。緑化のために花壇を造るにあたり、当時の花巻温泉遊園地の造園主任であった富手一氏は、花巻農学校時代の恩師である宮沢賢治を頼りました。賢治は毎日のように花巻温泉へ通い、熱心に花壇の設計や庭造りの指導をしました。この際に賢治が詠んだ詩「冗語」の詩碑と、賢治が冨手氏へ宛てた手紙の冒頭の部分が、現在はバラ園となっている南斜花壇の中心部であった場所に建っています。強化ガラス製の美しい碑です。また、1927年当時、紅葉館の前庭には宮沢賢治が設計した日時計花壇がありました。これは、花巻温泉再開発計画にもとづき1976年に移設こそされましたが、現在も賢治が設計した姿のまま、花巻温泉バラ園内にてご覧いただくことができます。