前川國男は、世界遺産に登録された国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエの弟子で、日本のモダニズム建築の旗手と言われる建築家。
弘前市には、前川の第1作から晩年の作品まで8つの建築物が残っています。
●木村産業研究所 (1932年竣工)
前川の日本での第1作。水平に連続した横長の窓などにコルビュジエの影響が見られ、市内の前川建築で唯一のコルビュジエ風の近代建築。見どころは1階の貴賓室のゆるやかなカーブを描くサッシュと丸い柱、1階トイレのドアノブのクリスタルなど。2004年、国登録有形文化財に登録。2021年、国の重要文化財に指定。
・住所:青森県弘前市在府町61
・電話:0172-32-0595(弘前こぎん研究所)
・入館料:無料
・会館時間:9:00~16:00(土日祝日定休日)
・見学:要事前申込み(弘前こぎん研究所へ)
●弘前中央高校講堂(1954年竣工)
白を基調とする内部、フレンチブルーに塗られた鋼板の外壁、軒裏の赤色など、色彩の工夫が見事。前川設計の音楽ホールの先駆けと言われる。前川が初めて手掛けた公共建築。 ※見学不可。学校敷地内への立ち入りはご遠慮ください。
●弘前市庁舎(前川本館1958年竣工、前川新館1972年竣工)鉄筋コンクリート打ち放しの柱、外壁にはレンガブロックを積み、城下町の風情を壊さないよう高さを抑え街並みとの調和が図られた。正面玄関の真上には群青色、本館の階段正面には赤色が施されているほか、3階ロビーは広々としたつくりで光が差し込み、開放的な空間になっている。2015年、本館が国登録有形文化財に登録。
・住所:青森県弘前市上白銀町1-1
・電話:0172-35-1111(代表)
・見学:外観は自由に見学可能
●弘前市民会館(1964年竣工)
コンクリート打ち放しの壁には、独特の木目模様がくっきり見られる。前川カラーと呼ばれる楽屋入口の赤いドアは前川の代表作である東京文化会館と共通点が見られるほか、銅管を使った2階のシャンデリアなどが見どころ。核となる棟と棟を卍型の一片で配置する平面構成は、前川建築の原型の一つ。2018年、第16回公共建築賞特別賞受賞。
・住所:青森県弘前市下白銀町1-6
・電話:0172-32-3374
・見学:要事前予約
●弘前市立病院(1971年竣工)
外観はコンクリート打ち放しで、木板の型枠の跡がコンクリートにはっきり残っている。前川が今まで建築した建物の凍害を教訓に、凍害に負けない建物に挑戦した。窓を壁面よりも奥に配置することで、積雪に対応している。
・住所:青森県弘前市大町3-8-1
・見学:外観のみ見学可
●弘前市立博物館(1976年竣工)
外壁は深みのある赤茶色の打ち込みタイル。中央のロビーには天井まで伸びる大きなガラス窓が設置されており、弘前公園の四季を感じることができる。敷地である弘前公園内の樹木を一本も切らず、外壁のタイルも一回り小さくし、自然や人に対する謙譲の精神をもって建築した。1996年、BELCA賞ロングライフ部門受賞。
・住所:青森県弘前市下白銀町1-6
・電話:0172-35-0700
・開館時間:9:30~16:30
・見学:外観見学は無料、館内は有料
●弘前市緑の相談所(1980年竣工)
桜の名所である弘前公園の環境に配慮し、一本の木も切らずに建築した。中庭にあるソメイヨシノを取り囲むようにアーケード、ロビー、事務所等が配置されている。外観は公園の木々の高さを考慮し高さを抑えられている。前川建築では珍しい大胆な銅板の片流れの大屋根で覆われている。正面は勾配屋根だが後ろから見ると四角い建物に見え、印象が異なる。
・住所:青森県弘前市下白銀町1-1
・電話:0172-33-8737
・見学:自由に見学可能
●弘前市斎場(1983年竣工)
前川の弘前での最後の作品。外壁は前川の特徴である打ち込みタイルで、玄関上の天井はダイナミックなコンクリート格子梁。炉前ホールを「黄泉の国」に、待機棟を「俗世」に見立て、間をつなぐスロープは「黄泉平坂(よもつひらさか)」をイメージしている。2010年、JIA25年賞大賞受賞。
・住所:青森県弘前市常盤坂2-20-1
・電話:0172-32-0643
・見学:要事前申込み(16:15~17:00で見学可能)