“出羽三山の精進料理”は、出羽三山の修験道によって育まれた料理です。修験道とは、人と自然と関わりを深く見つめる修行者たちの信仰のこと。羽黒修験道は、月山山麓の高度な食文化をベースに、寺院で発達した精進料理を山伏の自給自足の食生活に融合させ、さらに日本海を渡った京の感覚をも取り入れて、固有の「精進料理」を誕生させました。羽黒修験道において食すことは、心身を養うだけでなく、自然に宿る神仏や精霊とともにある「おこない」を意味しています。出羽三山の主峰・月山の山麓でははるか昔から、ブナ林を中心とした豊かな生態系において、山菜やキノコなど野生を食すために自然との対話が繰り返され、手間暇のかかる灰汁抜きなどの調理法が発達してきました。
①出羽三山神社斎館は、「奥の細道」行脚で出羽三山を訪れた際、俳聖芭蕉をもてなしたともいわれています。出羽三山山麓で採れる旬の山菜や筍を素材に、羽黒独特のしきたりを守り続けた絶妙な味わいがあります。神秘的な静寂に包まれた斎館でいただく御食事は格別の趣があります。
②手向宿坊街は、羽黒山の門前町として軒を連ねています。出羽三山に参拝する方々を迎え山へと案内する、出羽三山信仰の玄関口です。宿坊は、精進料理を食し、白衣を着、お山へ入るために身を清める潔斎(けっさい)所であり、出羽三山の文化を体現し、伝えていく生きた文化施設であり、まるで歴史そのものが語りだすかのような空間です。坊主は代々血を受け継いだ羽黒山伏、おかみさんのつくる精進料理は絶品。宿坊で過ごす時間は他では得られない特別なものとなるでしょう。